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歯周病の治療

歯周治療の流れ

 歯周病治療には原則的に大きく分けて2つの段階と治療後のメインテナンスという段階を合わせた全部で3つの段階から成っています。まず、第1段階では歯茎(歯肉)の陰に潜んでいる歯垢(プラーク)をいろいろな器具を用いて取り除いていきます。歯周病になった歯の周囲には歯周ポケットという溝ができています。この溝の中には歯周病の原因である歯垢(プラーク)がたまり、その周囲の歯茎(歯肉)に炎症を引き起こしています。この炎症が歯周病の本体で、歯を支える歯茎(歯肉)や骨を破壊していくものです。この段階で行われる治療は歯周病治療の基本となるもので、その成否はその後の治療にも影響してくるほど重要なものです。また、ここでは患者さんにも自身による口腔衛生管理を徹底してもらうことが求められます。患者さんに口腔衛生管理の方法を習得してもらうことは第1段階の治療での重要な目的のひとつです。歯周病治療は歯科医師と患者さんが一緒になって病気に取り組んでいかなければうまくいきません。歯科医側の治療だけでは不十分で、患者さん側にもしっかりとした自己管理を行ってもらう必要があるのです。
 第1段階の治療の後で歯茎(歯肉)の治り具合を調べます。どのくらい歯垢(プラーク)を取り除くことができて、炎症がなくなり歯茎(歯肉)が治ってきたかを見るのです。場所によってはこの時点で完全に治ってしまう場合もありますが、治らない場所(歯垢(プラーク)を十分に取り除くことのできない場所)に対しては第2段階の治療へ進むことになります。歯の周りにある溝の深さが一定以上の場所など、最初から第2段階へ進むことがある程度最初から推測できる場所もあります。そのような場所に対しては第2段階の治療への準備として第1段階の治療を行います。
 第2段階は外科手術を中心に処置を行います。第1段階の処置では不十分であったり、限界のある場所に対して行われます。特に、深い歯周ポケットの底の方に隠れている歯垢(プラーク)や進行した上下の奥歯などに対して行うことが多いでしょう。また、特殊なものとして失われた歯茎(歯肉)や骨を再生させる必要のある場所に対して処置を行ったり、まれに歯茎(歯肉)の形態修正のために外科手術を行うこともあります。
 通常はこの2つの段階によって治療していきます。基本は原因である歯垢(プラーク)を取り除くことにあり、また治療と並行して実行してもらう患者さん自身による口腔衛生管理です。歯垢(プラーク)を取り除いた後、歯垢(プラーク)が再び付着させないために必要となります。この自己管理は治療中だけでなく、治療後のメインテナンスという段階においても健康を維持するために必要なものです。
 歯垢(プラーク)は歯の表面にあり、そこは体の外側です。歯垢(プラーク)は細菌の集合体ですが、単に集まっているだけではなく外からの刺激や攻撃に耐えられるように集合体の中でひとつの生態系を作り上げています。こういったことが歯周病治療を難しくしている原因となっています。たとえば、体の外側にあるということは血管が通じていないということなので、本来体がもっている免疫を働かせたり飲み薬を効かせることができないのです。とても治療しにくい環境なわけです(☛歯周治療の原則)。
 現在では、歯垢(プラーク)を構成する細菌についての研究が進み細菌への様々なアプローチが報告されるようになりました。場合によっては抗菌剤を併用していく治療法も報告されるようになってきています。

[さらに詳しく]

 歯周疾患は歯の表面にバイオフィルムが形成されることにより引き起こされる感染症である。疾患の発症や進行には細菌側の因子や宿主側の因子がさまざまに影響を与えることが研究からわかっている。しかし、歯周疾患の病因に関するさまざまな研究結果から、プラーク感染を除去あるいは抑制する治療と注意深く行われるプラークコントロールの導入により、ほとんどの歯周疾患を治癒に導き健康な歯周組織の獲得を達成することができることもまた示されている。歯周疾患に罹患した患者への治療はこれまでに得られたところでは、初期・原因除去療法(initial, cause related therapy)、修正治療(corrective therapy)、歯周サポート治療(supportive periodontal tharapy)、あるいはメインテナンス治療に分類される。初期・原因除去療法とはさまざまなバイオフィルムの除去あるいはコントロールを行うステージである。その方法については術者側、患者側双方からのアプローチが必要である。初期・原因除去療法後、その結果を判定するために再評価というステップを踏む。このステップでは初期・原因除去療法に対する歯周組織の反応や治癒の程度とともに、患者の治療への協力度(プラークコントロールから読み取る)を判断する。この時の判断は次の修正治療の内容を決定するために重要である。たとえば、十分な協力度が得られない場合(プラークコントロールが不十分)には効果が上がらないため選択することのできない治療法がでてくる。再評価の結果、最初に立てた治療計画に修正を加えるなどして確定的な治療計画を決定する。この決定した内容を行う段階が修正治療というステージである。歯周外科処置、歯内処置、修復・補綴処置が含まれている。もちろん初期・原因除去療法により歯周疾患が治癒する場合もあり、そのまま歯周サポート治療へ移行する場合も多い。歯周サポート治療は疾患再発の予防であり健康の維持である。そこには専門家によりモニターされた患者自身によるプラークコントロールプログラムの実施が必須である。
 最初に診査診断を行って治療計画を立案するわけだが、治療を始める前の時点で明確な治療計画の策定はできず、あくまでも暫定的な治療計画となる。というのは、①初期治療の成功の程度がわからない:原因除去療法の結果は修正治療での治療法選択の基礎となるが、組織の治癒は歯肉縁下デブライドメントや患者のプラークコントロールの質によるため、②治療に対する患者の主観的な要求がわからない:歯科医側の提供する医療の質や到達点と患者側の主観的な要求とが一致しているかどうかわからないため、③ある特定部位の治療結果を正確に予測することはできない:全ての歯で治療が成功裏に終了するかどうかを予測したり特定部位の治療結果を予測することが困難な場合があるため、などの理由による。
 初期・原因除去療法ではさまざまな方法でバイオフィルムの除去あるいはコントロールが行われる。このステージでは、術者側においては歯肉縁下デブライドメントにより除去できるバイオフィルムをしっかり除去することが大切である。一方、患者側では自身の口腔衛生環境を改善し維持するために必須となるプラークコントロールに習熟してもらうことが必要である。これが不十分では治療効果は半減してしまう。習熟してもらうためには各人に適した方法や道具を提供する必要があるが、そのためには術者が患者自身や患者の主観的要求をよく理解しておく必要がある。いってみればこのステージは術者が患者の人柄にふれるための期間でもある。
 再評価では初期・原因除去療法で行われた感染の除去あるいは抑制の程度について様々なインデックスを用いて評価する。基本的には最初の診査時に用いたものと同じインデックスにより評価を行うため、最初の診査時にはできるだけ多くのインデックスを用いて診査しておく必要がある。再評価は治療結果を判定するために行うものなので、最後に行われた治療による"ダメージ"から組織が回復する期間あるいは感染除去による組織の治癒が完了したのちに行う必要がある。この"待ちの期間"については、歯周疾患の病態や進行程度によりあるいはどの組織の治癒までを待つのかにより異なってくる。たとえばそれぞれの組織の治癒・成熟まで待つとすれば、接合上皮の治癒だけでも2〜3週間、結合組織の治癒では2〜3ヶ月、骨の治癒では3〜6ヶ月ほどかかる。つまり、再評価を行う時期は患者によって異なるのである。そして重要なことは、この期間中も患者のプラークコントロールが保たれ、再感染が起きないようにしていなければならないということである。そうしなければ、組織の治癒は得られないので、初期・原因除去療法という治療の成果を判断できず修正した治療計画が立案できないことになる。
 修正治療では歯周外科処置とその後の補綴処置を含む最終修復治療が含まれる。歯周外科処置は初期・原因除去療法により治癒しなかった部位や根分岐部病変部に行われる。
 修正治療終了後、疾患の再発防止や健康維持のためにメインテナンスプログラムに入る。一定の間隔で定期的なチェックを行う。この期間については、メインテナンスステージに入る時の状態や適切な口腔衛生状態の維持のための患者の技能に応じて決められる。

【参考文献】

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Densitometric analysis of lower molar interradicular areas in superposable radiographs  Payot et al. (1987)
Increase of interproximal bone density after subgingival instrumentation: a quantitative radiographical study  Dubrez et al. (1990)
A systematic review of the effect of surgical debridement vs non-surgical debridement for the treatment of chronic periodontitis  Heitz-Mayfield (2002)
Disease progression identification of high-risk groups and individuals for periodonttitis  Heitz-Mayfield (2005)

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